専門職Q&A


Q:担当しているご利用者に幻視があり、服薬後も改善がみられず、夜間は眠剤を服用しても眠れていない日が多いご様子です。現状以上の服薬調整は難しいため、どのように対応、支援していけばいいかを相談したいです。

 

A:1)住環境・生活環境の整備、2)生活リズムの調整、3)訴えに対する周囲の人の対応、が在宅でも施設生活であってもまず行うべき基本的な事項と考えます。1)幻視に対しては(錯視を起こすような)紛らわしい物品等を片付けて整頓する、幻視の起きやすい場所の照度をあげる等々の対策で出現頻度をある程度減らせる場合があります。また、2)昼夜のリズムが逆転していると夜間の幻視出現頻度も増える傾向にありますので、日中の覚醒度を高めることは幻視にも不眠にも有効な一つの支援目標になります。この際、日内のリズムは個々人で異なっていますので、まずは覚醒睡眠のリズム表(当HPよりダウンロード可)などを用いてご本人固有のパターンを把握されることをお勧め致します。3)の目標は、ご本人が信頼して不安を語ることができる存在となることです。ご本人の訴えに対しよく耳を傾け、不安を理解していることを伝えたうえで共に対応を考えていきます。この際、見えているものをご本人が「幻視」と認識できているかいないかによって少しずつ対応が異なってくるかと思います。



Q:急性期病院に勤めております。

患者さんの反応が悪いのが、認知機能の変動によるものなのか、薬の影響なのか、せん妄などによるものかわからず、どこからアプローチしてよいか悩みます。まず身体疾患の要因がないかは考えるのですが…。

 

A:仰る通り、DLB患者さんの反応が低下している場合、それが認知機能の変動か、アパシーなど精神症状の一環か、薬の影響か、せん妄か等々を区別するのは容易でないことが少なくありません。急性期病棟に入院されているのであれば、ほぼすべてのケースでせん妄の原因となる身体要因も存在しているでしょうし、実際、見えている症状が複合的な原因の結果であって、単一の要因でないこともしばしばあると思われます。したがって、重要なのは、改善できる原因の見落としがないかどうかです。薬が原因でないかどうか(種類や量の過多)や、せん妄の鑑別は、病歴と症状経過を丁寧に聴取することで可能になる場合が多いと思います。急性期病棟の場合であれば、入院前後の症状比較をご家族から伺うことで気づきが促されることも少なくありません。可能な限り原因の切り分けをしつつ、複数の要因を想定しながら対応していくというスタンスで考えています。



Q:作業療法士として、重度の認知症患者の方にどのように向き合い治療していけば良いのか悩んでいます。

A:重度認知症への作業療法についてですが、 重度例では理解、表現能力が低下していると思われますので何らかの反応を得られる刺激を探すことになります。それが音楽であるかもしれませんし、昔の写真やかつて興味のあったものであるかもしれません。外出も一つの手段になるかもしれません。そこから反応性、活動性を広げていくということになります。(協力医より)

 

 

重度の認知症の方の場合、私はまずコミュニケーションを大切にしています。この方に届く話し方、言葉選び、声のトーン、立ち位置、距離。そして、この方が周囲の環境を探知するための、どういった機能をお持ちであるか。難聴がないか、視力は、意識レベルは,言語の理解は等々・・・。

OTの方であれば、身体機能・高次脳機能・精神機能からもその評価が可能と思います。その方が今お持ちの機能をフル活用して、働きかけていくようにしています。できない能力の評価ではなく、できる能力を見つけるための評価が大切だと思っています。また、その方の「感情」に焦点をあてて、認知症の方を見ることはとても大切にしています。例えば、事実と全く違うことを言われていたり、「ご飯を食べさせてもらっていない」など仰っていれば、「お食事がまだなんですね。今はおなかがすいていらっしゃいますか?」と、いったんその方の話の世界に入ってみたりします。そのやりとりを繰り返していると、「誰もご飯を食べさせてくれない」→「私はこんなところにひとりぼっち」→「とても寂しく、不安だ」などといった感情を表す表現になってきたりすることもあります。そうすれば、自ずと必要な言葉かけや対応が変わってくるのではないでしょうか。今、その表現の裏で、心にどんな感情を抱いていらっしゃるのか、そこを求めて、やりとりしてみられてはいかがでしょうか。

OTはアクティビティだ!なんて言う人も居ますし、間違っているとは思いませんが、これもアクティビティを提供し、一緒に実施することで、その方が得られるポジティブな体験や感情が得られることが大切だと思っています。あとは、褒める!!ただ単に作業を行うだけでは意味がないかと。

ということで、まとめると

●その方が持っている能力(耳がしっかり聞こえる、ご家族の顔を認識できる、など)を見つける

●その方に届くコミュニケーション方法は何かを探りながら話す

●その方のその時、ただ今の感情を探りながら関わる

●褒める!心の底から褒める!(=敬意を表す)

(サポーターOTより)

 



Q:昼間の活動性を高めて睡眠を促すことはレム睡眠時の問題の解決にはつながらないのでしょうか?

A:昼間の活動性を高めることは、昼夜のリズム形成および夜間睡眠の質改善により、日中の過眠や夜間の不眠症状軽減につながることが期待されます。一方で、レム睡眠行動障害(RBD)の症状出現頻度と不眠症状との間には関連があることが報告されています。したがって、日中の活動性を高めることはレム睡眠行動障害の出現機構に対する根本的解決策ではないものの、出現頻度や症状の強さを緩和するために有効な対策の一つと言えると思います。

ただし、既にRBD症状が強く出ていて夜間睡眠がとれていない場合は、昼間無理やり起こして活動性を高めようとしてもうまくいかないばかりか転倒などのリスクが高まってしまうこともあるため注意が必要です。

 



Q:私は手術室勤務しています。

手術に使用する薬剤する多くはDLBの患者さんにどのような影響があるかお聴きできればよかったなと思いました。

A:パーキンソン症状の治療薬として使用されることがあるセレギリン(エフピーⓇ)などMAO-B阻害薬は、術中術後鎮痛に用いられるオピオイドと併用した場合、パーキンソン症状の悪化や自律神経症状、精神症状などをきたすことが知られています(セロトニン症候群)。したがって、MAO-B阻害薬は事前に中止になっていることも多いかと思いますが、内服が継続されている場合は周術期に鎮痛目的のオピオイドは使用しないことが推奨されます。

また、フェンタニル、レミフェンタニル、モルヒネなどはDLB・パーキンソン病の筋強剛の症状を増悪させることがあり、使用された場合は抜管時などに注意が必要です。

メトクロプラミド(プリンペランⓇ)、プロクロルペラジン(ノバミンⓇ)などよく使用される制吐剤には中枢性の抗ドパミン作用があり、DLB患者さんには使用を避けるほうが無難です。代替薬として、ドンペリドン(ナウゼリンⓇ)の坐剤などが推奨されます。

術後せん妄などで使用されることがあるハロペリドール(セレネースⓇ)などの「定型」抗精神病薬はDLB特有の薬剤過敏性の原因となり、パーキンソン症状や自律神経症状の増悪をきたしますので原則使用しません。

 



Q:幻視・幻聴があるDLBの方(疑い)が「家族みんなが幻聴と言ってくるけど私にはちゃんと見えているし聞こえている」と仰っているケースでは、ご家族側の対応を変えていただくことが1番なのでしょうか。否定はしないようにと伝えてはいますが、同居ご家族も精神疾患があるようであまり負担をかけることが出来ず対応に悩んでいます。また、DLBの症状の中には夜間泣いてしまうなど精神状態が不安定となるものもあるのでしょうか。

A:ご相談のケースでは、ご本人が感じておられることとご家族の主張に食い違いがあり、コミュニケーションがうまくとれていないことが推察されます。また、一般論としては、DLBに伴ううつや不安の一症状として、寂しさを訴えられたり、精神状態が不安定になることは少なくありません。したがって、すでに実践されている通り、ご本人の言を否定してかかることをまずは避けるようお話しするのが基本となりますが、お困りのように、ご家族も疾患を抱えておられる場合には適切な対応が困難になることがしばしばあります。相応しい対応策は個々の状況によって異なってきますが、介護の役割を分担できる第三者の介入(訪問サービスや施設利用)が必要となるケースが多いかと思います。訴えを理解してくれる人間が周りにいることで気持ちの安定や症状緩和につながる場合が多いですので、環境の調整は治療の重要な一側面であると考えます。


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