■パーキンソン症状■

Q:パーキンソン症状のリハビリ方法について教えてほしいです。

Aパーキンソン症状の運動症状は、姿勢の障害(前傾、前屈)、筋強剛(四肢体幹が硬くなる)、肘、膝が曲がる、バランスの障害(特に後方へ倒れやすくなる)、歩行時にすくんで足が出なくなる(すくみ足)、歩幅が小さくなる(小股歩行)などが主なものです。それぞれに相互に関連しており、専門家の意見を聞くことが重要です。介護保険制度では訪問リハビリ、通所リハビリが利用できますし、ある程度以上のパーキンソン病については一部の施設で、医療保険を使った難病リハビリの利用も可能です。

ご家庭でできるリハビリとしては、室内での日常動作、戸外の歩行、階段の上り下り、スクワット、フラミンゴ体操(何かにつかまり、片足を少し上げて1分から3分、を1日3回繰り返す)など、四肢(特に下肢)体幹の筋肉への刺激を基本に考えてください。ただし、関節にに痛みのある時は無理をせず、その治療を優先してください。反面慢性的な身体各部の痛みについては、ある程度動きながら調整することも必要です。リハビリスタッフとともに行う訓練とは異なり、歩行に関しては、安全を第一とし、歩幅を広げることや早く歩くことを重視するのではなく、むしろ、ゆっくりとした歩行のほうが筋肉への刺激になりますので、距離よりも時間で考えていただくことが大切です。すくみ足のある方は、平地歩行より階段の方が足が出やすいので、状況により、見守り・介助の上、手すりなど安全確保に注意しながら利用できるところで行ってください。


Q:嚥下機能低下について、その他 介護上で注意する点を教えて下さい。

 

 

Aパーキンソン病の嚥下障害は、不顕性誤嚥(むせのない誤嚥)に注意する必要があり、それはレビー小体病でも同様です。改善に役立つかもしれない薬剤、悪化させる可能性のある薬剤が注目されていますが(参考)今後はエビデンスのある検討が期待される分野です。口腔内の唾液の増加による流入や原疾患や薬剤による便秘のために腹圧が上がることから,食物逆流による誤嚥性肺炎を生じる可能性も高くなります。また誤嚥性肺炎の予防法として,一般に口腔内を清潔にすることも重要です。以下、介護上の注意点、工夫について挙げておきます。

 

いつ食べるか

On-Off状態がある場合、抗パーキンソン病薬の内服やアポモルヒネ皮下注による薬効がある時に摂食するようにします。Off時には食物の取り込みが困難になるばかりでなく、困難を押した摂食では誤嚥を起こす危険性が高くなるからです。食事を楽しむことができないことは言うまでもありません。

どうやって食べるか

体幹が前へ曲がる、前へ倒れるという状況をよく見受けます。前へ曲がると腹部が圧迫されて十分な量を摂取できなくなったり、食後に逆流したりする問題が起こることがあります。また、食道の蠕動運動が弱いことが加わると飲んだお薬が食道内に留まり、薬効が出なくなることがあります。さらに、横へ曲がる場合も含めて、お膳をよく見て食物を取り込みにくくなり、自己摂食が難しくなってしまいます。

この場合の対策としては、車いすや椅子のひじ掛けで支えられるようひじ掛けの高さを選んだり、間にクッションを置いて支えるようにします。それでも難しい場合は理学療法士が用いるポジショニング用の太い、ベルトを体幹の適切な位置に巻いて起こした姿勢を維持する方法もあります。また、テーブルの高さの方を身体に合わせるなど、できるだけお膳を見て取り込むことができる条件を調整します。

いずれの場合も理学療法士、作業療法士の工夫が役立ちます。

何を食べるか

I.飲み物でむせる場合:咀嚼を必要とする食物と、飲み物では咽頭を通過する時間が違います。

II.飲み物は、より速く移動するためゴクンと飲み込む嚥下反射が間に合わず誤嚥をするあるいはしかけることになり、それを吐き出すためにむせが起こります。

III.むせずに飲み込む工夫として、ゆっくりのどに入るように、飲み物の動きを遅くするとよい場合があります。それがとろみ付けです。

IV.スープや汁物に少しのとろみを付けるだけでも楽になる場合があります。また、トマトジュースやネクターなど元々少しとろみのある飲み物を選ぶこともお勧めします。

 

咀嚼~嚥下が上手くいかない場合:

全体的に柔らかい献立、トンカツよりもカツ煮、よく煮たおでんなどを選ぶとよいでしょう。また、こんにゃくやかまぼこ、プチトマトのように口の中で逃げるように動くものは食べにくいので、避けるかよく煮る、混在させないで一種類ずつ口に入れ、よく噛むことを意識して噛んで飲み込むなどの工夫でトラブルを減らすことができます。

 

参考

 

誤嚥性肺炎の予防に効果のある(かもしれない)薬剤

 

降圧薬であるACE阻害薬には、サブスタンスPの分解を阻害する作用もあり、咳の誘発は副作用でもありますが、高齢者の誤嚥性肺炎を防止し、QOLに好影響と言われることもあります。

シロスタゾール:血管拡張作用も持つ抗血小板薬シロスタゾールは、細胞内シグナル伝達系を活性化し、チロシン水酸化酵素の合成を誘導することにより、ドパミン合成を維持します。さらにサブスタンスPの産生が維持され、誤嚥予防効果も発揮します。

・漢方薬:一部の漢方薬によい影響があるという報告があります。

半夏厚朴湯が誤嚥性肺炎の予防に有効であるという報告があります。

また、嚥下障害に有用であるといわれる他の漢方薬もあります。胃の内容物の逆流が誤嚥の原因になっているときに、有効とされる漢方薬です。例)六君子湯 2.5g 3包分

モサプリドクエン酸塩

消化管の動きを活発化し、胃の内容物の逆流による誤嚥を抑えます。とくに胃瘻を使用している方に有用と考えられます。

アマンタジン

大脳基底核でのドパミン遊離を促進します。とくに脳血管障害を有する高齢者で肺炎の発症を抑える効果があるとされています

例)アマンタジン50mg 3錠分3

カプサイシン

トウガラシなどに含まれるカプサイシンは、咽頭や下気道に分布する無髄の知覚神経であるC線維末端を刺激し、神経末端に貯蔵されていたサブスタンスPなどを含むタキキニンを遊離させ、咳を誘発します。

      例)カプサイシン入りフィルム状食品

葉酸

緑黄色野菜などに含まれる葉酸は、消化吸収能が低下した高齢者では欠乏しやすいとされています。葉酸は、ドパミンなどの神経伝達物質の合成に重要な役割を果たすことから、嚥下・咳反射の改善にも良いとされています。

 

嚥下障害に悪影響のある薬剤(薬剤性嚥下障害)

平滑筋や骨格筋の機能障害

抗コリン薬、三環系抗うつ薬、テオフィリン、カルシウム拮抗薬、アルコール

下食道括約筋(食道-胃部分)の圧低下

プロゲステロン、グルカゴン、ドパミン、テオフィリン、カルシウム拮抗薬、アルコール、アトロピン、ブチルスコポラミン

口腔咽頭および食道の嚥下機能低下

中枢神経系の鎮静作用を有する薬剤

咽頭の筋肉麻痺

痙性斜頸や顔面神経麻痺時のボツリヌス毒素の局所投与

麻痺による嚥下障害

経管チューブ挿入・内視鏡検査・歯科治療に用いられる局所麻酔

口腔乾燥症から嚥下障害

抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗不整脈薬

筋弛緩作用のある薬剤 

     筋弛緩薬



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