A:レム睡眠行動障害には、寝言が少し多いくらいの軽度の症状から、立ち上がって暴れるような激しいものまで様々なケースがあります。症状が顕著な場合、患者さんご本人はもちろん、同居のご家族や介護者にとっても不眠の原因となり、身体的・精神的負担を生じることも少なくありません。
1. 良い睡眠を確保するための基本的な注意事項として、昼と夜のリズムを明確に作るようにすること、寝る前の刺激物(カフェインや過度のアルコール等)の摂取を避けることは重要です。また、レム睡眠行動障害は夢の内容に応じて体が反応してしまう状態であり、恐ろしい内容など負の感情が伴う夢を見た場合に問題がおきることが多いです。恐怖を喚起するような内容のテレビ番組や書籍などはなるべく避けることをお勧めします。
2. レム睡眠行動障害による不眠に対しては、一般的に使用される睡眠薬とは異なる薬剤が有効なケースがあります(クロナゼパムなど)。ただ、処方については他の服用薬との兼ね合いもありますので、レム睡眠行動障害でお困りの場合は一度主治医にご相談なさって下さい。
A:「夜中に何度も起きてしまう」という同じ症状でも、様々な異なる原因で起きていることがあり、その原因によってふさわしい対応も異なってきます。レビー小体型認知症の場合、「昼夜のリズムが乱れ昼にかなり寝てしまっているため夜に目がさめる」「頻尿などの症状でトイレのために目がさめる」「レム睡眠行動障害の症状がある」などが頻度として多く、これらの複数が関わっている場合も少なくありません。適切な対応を考えるためには、まずご本人が起きてしまう原因が何であるかを突き止める必要があります。昼夜のリズムを作ることはほぼすべての場合に推奨されますが、頻尿やレム睡眠行動障害の場合はそれぞれにふさわしい薬剤を使用すると有効な場合があります。「睡眠薬」にも様々な種類のものがあり、一概に「使用しないほうが良い」とは言えません。副作用などの懸念からデメリットが上回る場合ももちろんありますので、眠れない原因に応じて主治医とご相談されるのが良いかと思います。
A:「夜眠れないから昼寝てしまうのか、昼寝ているから夜眠れないのか」という問いは、「にわとりが先か卵が先か」と同様なかなか難しい問題です。レビー小体型認知症ではレビー小体と呼ばれるたんぱく質の脳内への蓄積により、睡眠覚醒リズムの乱れや覚醒度の低下が起きることがわかってきています。このため、本人がいくら起きていようと努力しても昼間眠ってしまったり、逆に夜間すっきり覚醒した状態になることも珍しくなく、このリズム変調に抗うことは容易でないケースが多いのは事実です。ただ、生活上の工夫でリズムの乱れを軽減することは可能です。人間の概日リズム(昼夜のサイクル)を調整する最も強力な因子は太陽光です。日中ともかく日の光をたくさん浴びていることがリズムの補正につながります。外へ出て活動できるのが理想ですが、日中極力日の当たる窓際にすわっているだけでも(仮にすわってまどろんでいたとしても)、暗い部屋にいるのとは大きな違いが生じます。概日リズムはひとりひとり固有であり、またその時期その時期に応じても異なってきますので、まずは睡眠生活日誌などを用いてリズムがどのようになっているか把握に努められることをお勧めします。